日本フィンランドむし歯予防研究会(事務局=東京都荒川区)が10月27日、東京・高輪プリンスホテルで開催したプレスセミナーにおいて、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の仲井雪絵・助手は、妊娠中から出産後にかけて、母親が天然甘味料「キシリトール」を摂取することで、母から産まれてくる子へ、虫歯の原因菌であるミュータンス菌感染が抑えられる効果が実証されたと発表した。
ミュータンス菌の感染が遅いほど、虫歯になりにくくなるとされており、母親の心がけが、子どもの虫歯予防につながることを実証した研究成果として注目される。
虫歯は、ミュータンス菌が砂糖などを分解する際にできる酸が歯を溶かすために起こるが、キシリトールを摂取すると、酸が生成されないうえ、ミュータンス菌を、歯からはがれやすい善玉菌に置きかえる作用が確認されている。
ミュータンス菌は、歯が萌出する前の小児には存在せず、小児虫歯の原因は、ミュータンス菌が口腔内へ感染することが挙げられる。その主因は母親から唾液を介して移るミュータンス菌感染で、経路としては食べ物をあらかじめ噛んでから子供に与える「噛み与え」やスプーン、箸を共有する行為などが挙げられている。
仲井氏は、妊娠期からキシリトールを摂取することで、母子間のミュータンス菌伝播予防および予防に対する効果について(1)母親自身の唾液中のミュータンス菌数が減少するか否か(2)ミュータンス菌の母子伝播に対する予防・抑制効果‐‐の2点について明らかにすることを目的に研究を行った。
研究方法は、産婦人科を受診した妊娠3~5ヵ月の妊婦の舌表面から得られた唾液のミュータンス菌検査を行い、ハイリスク者のみ84人を対象者として抽出しキシリトール群と対照群の2群に無作為割付を行った。
その後、両群の母親に対し、妊娠6ヵ月目から出産後9ヵ月までの13ヵ月、3ヵ月ごとに個別指導として口腔衛生、ブラッシング指導および口腔内検診を共通に実施した。キシリトール群には、甘味料としてキシリトールを100%含有するキシリトールガムを与え、食後など1日4回以上毎日5分間摂取するよう指示した。この際、子供には一切介入はしなかった。
結果は、母親の口腔内については、介入3ヵ月後の対照群では、7人に1人、キシリトール群では2人に1人がローリスクであった。よって、キシリトールを摂取した方が、ローリスクに転じやすいため、その有効性が示唆された。
子供の口腔内については、子どもが1歳半になるまで、3ヵ月ごとに口腔内のミュータンス菌の量を追跡した。
6ヵ月齢時に、ミュータンス菌が検出された子供の割合は、キシリトール群と対照群の間に有意差を認めなかったが、9ヵ月齢時以降において、子供が1歳、1歳半の時にミュータンス菌が検出された子供の割合は対照群が76.9%、91.7%。これに対しキシリトール群は、それぞれ15%、42.9%と感染率は半分以下に抑えられた。
よって、妊娠中から母親がキシリトールを摂取することによる母から子供へのミュータンス菌感染予防の効果はあると考えられると結論付けた。
仲井助手は「出産前後の母親の口腔状態を改善することが、子どもの虫歯を予防する一つの手段になる」と話している。